研究組織

平成11年度に作られた岩手医科大学医学部先端医療研究センターは、平成16年度からハイテクリサーチ部門に加えてオープン・リサーチ・センターとオーダーメイド医療実現化プロジェクト部門を加えて、講座横断的研究プロジェクトを統括するようになった。

ハイテクリサーチ部門は、3T(テスラ)MRI装置を据えた超高磁場MRI施設ならびにPETを備えたサイクロトロンセンターにおける脳機能評価をおこなう画像解析部門が中心となっている。それに加えて脳循環の基礎を研究する血管研究部門と、神経組織の生理的あるいは病的反応を研究する神経修復部門を配して、基礎研究と臨床応用を結びつけるようにした。脳循環の特異性を明らかにするため微小循環の研究者の参画を促し、組織再生という観点から骨髄幹細胞の研究者もグループに加わった。
各部門は、それぞれ複数の研究プロジェクトをかかえており、助手以上のプロジェクト実務担当者がプロジェクト推進委員として研究の指導と実行の責任を負い、定例のプロジェクト推進委員会で相互評価を受けることとした。各委員は講座の枠組みにとらわれずに、各々のプロジェクトを決めることができるこため、研究進捗状況と内容の変更に伴い、組織を再改変できる。また、ハイテクリサーチ内ではそれぞれのプロジェクト推進委員が複数プロジェクトに関与することが可能であり、学際的な仕事を推進できるように配慮した。プロジェクトチームには大学院生や研究生も参加している。なお、臨床症例への応用は、本学倫理委員会に諮り本人の同意を得た上で施行している。

本構想の中核をなす超高磁場MRI研究施設は、学内のみならず学外研究者も利用可能な共同利用研究施設として運営されており、この施設を維持・発展させることは、高額な研究資産の有効利用という点で有意義である。そこで、ハイテク・リサーチ部門の研究資金の多くを、 MRI装置の維持費と消耗品にあてている。更に、1)超高磁場装置の改良と、2) MRIの画像解析の向上あるいは基礎生物学の研究に従事するPD(ポスドク)採用を施行した。PDは、特定講座に帰属するものでは無く、先端医療研究センター長がその人事を掌握するものとし、複数講座にまたがるプロジェクトに参画できるようにした。
研究資金の配分は、先端医療研究センター運営会議で決められるが、それに先立ち、プロジェクト推進委員会で予算案を審議の上、上申する。これまでの過去3年間は、資金を各プロジェクトに均等配分せずに、各々の推進委員から出された実験計画と実績および将来性を加味して傾斜配分してきた。ただし、各プロジェクトに全額を配分せず、中央経費を多めにとっておき、不測の機器の補充・拡充あるいは修理・部品交換などに対処できるようにしており、柔軟性に富む資金運用が可能となった。

大学院生、ポスドク(PD)の活用状況
 大学院生は、大学院担当教員の指導のもとで、研究プロジェクトに参画した。PDに関しては、岩手医科大学独自のPD制度を整備し、全国公募して研究に参加するスタッフを集めた。

研究支援体制
学長の統括のもと、先端医療研究センター運営委員会を組織し、運営に関する重要事項、管理運営について審議し研究を支援してきた。あわせて、超高磁場MRI研究施設、バイオイメージングセンター(旧電子顕微鏡室)、動物実験施設、DNA解析室等が共同利用施設として支援にあたった。

共同研究の状況
他の大学(秋田大学、岩手県立大学、東京大学など)や理化学研究所などの研究機関と共同研究がおこなわれている。

研究不正に関して
 プロジェクト推進委員会で、委員どうしで研究内容を相互検証している。
 研究プロジェクトの弾力的な運営をしているため、成果を出さなければ研究費が配分されなくなるということは無い。そのため、論文出版の異常な圧力は少ない。
 PDや大学院生が属する研究チームは一つとは限らず、むしろ複数のプロジェクトに関与できる。チームに隷属することが無いため、不正に対して異議申したてがしやすい状況になっている。また、複数の上司がPD、大学院生の研究をチェックできるようになっている。